破落戸雑記

無銘の破落戸が綴る雑記

破落戸放浪記

 

東京を脱出する時はいつも心躍るけど、今回は意味合いが強い。基本的に独り旅、好きな所に行き、好きなものを食べる。自分だけの為の旅は自分勝手な人間にとって最高の時間。そしてこの旅は"修学旅行"という意味も持っているので自分なりの形で”まとめ”を残そうと思う。

 2泊3日の旅の初日、友人を訪ねて浜松に向かった。この旅での目的はその地の日常を肌で感じる事。リサーチはしていてもナビに依存する事はしないように目的のエリアの方角が分かってからは適当に歩いてみる。普段は煩雑に感じる景色も最高の被写体だ。

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 街を歩く上で裏路地の呪縛からは逃れられない。情報が凝縮していて手っ取り早くそれっぽい雰囲気を味わえる、というのもあるけど思わぬ出会いも多い。例えば猫との遭遇率も高く見つけると、とりあえず躙り寄ってみる。大抵逃げられるが珍しく人に懐いており尾を絡ませたりとなかなか愛嬌がありこちらもデレデレ。撫でる手を止めると寄ってくるので、写真がままならずなのが悔やまれる。 

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 人が増え始めた街を後にして知人達と合流し浜松の有名どころを何件か。舘山寺の裏山からパノラマビューで浜名湖、湖岸の街並みを堪能。節分のイベントで賑わう愛宕神社の喧騒が嘘のよう。それにしても"遠州の空っ風"が堪えた。

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立ち寄った観光案内所はパチンコ屋だったと思われる店に併設されていて懐かしのゲームを遊べるらしい。なかなか交わる事の無さそうな組み合わせと染み付いたタバコの匂いが哀愁を誘う。キラキラするものは大抵フォトジェニックになる。下手にボカして距離感を出すより正対する方がいい時もあるのかもしれない。 

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 丁度日の入りの時間に合わせて到着した中田島砂丘。数年ぶりの再訪ながら防潮堤の建設により砂丘が人工物に成り果てたというのは受け入れ難い。「砂で覆い景観を維持する」という一言で片付けられたその先にどのような結果があるのか。その地に住む人の生活を前に野暮なことは言えない。 

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 旅初日の夜は友人の行きつけの店へ。自分ひとりならまず入れないであろう個人経営のお店で、独特のコミュニティが築かれている店内は新鮮。程よい喧騒と暖かみのある光の中で鰯料理を堪能した。鰯といえば!の南蛮漬けや刺身、パリパリ香ばしいご飯焼き、お鍋、そして梅と納豆が効いた〆のチャーハンまで…居酒屋ながら食事メインでも問題なく満腹になった。 

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翌朝、一路名古屋へ。更に中央本線に乗り換え目的地、多治見へ。普段の電車移動では騒音に感じる音も旅フィルターを通せば五感を刺激する材料となり微妙にアクセントの違う車内アナウンスにもつい聞き入ってしまう。 

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ここでは「学」パートとして美術館見学を課題にしたもののメイン展示が終了後で小規模な企画展を観ただけになってしまった。陶器をメインに扱う美術館で世界のティータイムをテーマにしているらしい。戦後日本の大手ホテルなどで使われていたという食器たちは目に留まりやすい。色の選択は明快、かつ綿密に練られたシンプルなデザインに見習うことは多い。

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 その往復路では日常の景色から演出された空間への境目「油断」が分かってしまうのもドアツードアではない旅の醍醐味かもしれない。 駅に戻り、事前リサーチした幾つかの街並みを目指し街歩きを開始。さすが陶芸の街、という事なのか時々それらしき光景にも遭遇する。  

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 そして今回の旅のハイライトと言っても過言ではないのが、「銀座商店街」エモすぎる…無視できない寂しさとやけにカラフルな雰囲気がコントラストをバチバチに効かせてくる。

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 翌日の予定と勘違いして昼食のアテがなかったのも幸いして、商店街の中の喫茶店を通り過ぎる事ができなかった。頼んだのはカレーとフルーツパフェ、特にこのフルーツパフェにはグッときた。リンゴのウサギさんはガタガタだし生クリームはそもそも絞ってない。なのに経験のない魅力に、再訪を心に誓うほどだった。旅を終えてからも飾らないデザートが食べれる店がないか、喫茶やパーラーを漁っている... 

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 せっかくなので温泉にも寄った。健康ランドというかスーパー銭湯というか、コンセプトが謎で落ち着きのない空間ではあったけど、お風呂は清潔で歩き疲れていた自分にとっては十分すぎる施設だった。パフェの余韻に浸ったり、翌日の予定の事をボーッと考える独り風呂もなかなか良い。

 拠点の名古屋に戻り、全体的な旅の傾向として昔ながらの洋食を…と思ってリサーチした店が駅ナカかつスタイリッシュで若干戸惑いながらも楽しさと疲労で謎のテンションになっていたおかげか目当てのオムライスを美味しく頂いてしまった。

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 とはいえ夜の街を散歩するほどの勇気はなく、道中のセブンイレブンでおやつを買い込み宿へ。最新のビジネスホテルに関心しつつ、写真を取り込んでSNSへの投稿も含め1日を振り返る。その時の言葉は気持ちが高ぶっている分暴れ気味だけど、落ち着いて文章にしている今参考になる。

最終日、朝のニュースでの雪予想に持ち堪えることを願い岐阜へ。駅前ロータリーと道路を挟んだ街並のギャップが大きい、もちろん心踊るのは後者。

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早朝の閑散とした雰囲気に加えて空は曇り、アーケード内は驚くほどに暗い。

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 しかし、文化観はもちろん24時間健在、アーケードのロゴは筆記体にネオンという組み合わせ。前日の商店街とは大きく異なりながらも時代性は十分に切り取れた。またアーケード内には謎のアートが掲げられており、新しいカルチャーの流入も観られる飽きない空間だった。 

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 「柳ヶ瀬商店街」というリサーチのもと向かったがエリアは広くそれぞれの通りに特色があるようで、全部回れた自信もない。

  途中、予報通り雪もちらつく程冷え込み、カメラを持つ手がままならず、味噌カツの店が開くまでは!という気持ちでデパートに避難するも、改めて自分の場違いぶりを実感させられてしまった。

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 しかし、我慢しただけあり味噌カツは最高に美味しかった。味噌の甘さと肉の旨みが身に沁み、衣が崩れる軽やかな音と和がらしの辛さとが味と旅の思い出にメリハリをつけた。 満腹とあまりの寒さに散策意欲は削がれ、活気が出始めた街に若干の後悔を残しつつ去ることになってしまった。

 さて書き出しに目的は日常を肌で感じることと書いたが、それは安易な考えだったのかもしれない。長く留まらなければそれは難しい。ならば生活している自分の地元に目は配れているのか考えてみるもそうでもないことがほとんどだった。今回の旅で、自分の生活圏を俯瞰し発見する機会を得たと考えると旅に一層の厚みが増すと思う。

 復路は700系こだまで名残惜しく帰京。車内販売がなく例のアイスが食べられなかったのは残念だった。途中うたた寝から目覚めると新富士に停車中。どうやら東海地域で苦しめられた雲を抜けたようで爽快な晴れとそびえる富士が眩しかった。 

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 無事帰京を果たし、この旅の何よりの条件である"予備校に間に合う事"をジャストのタイミングで達成し旅の幕を下ろした。 

帰京から投稿まで3週間近く掛かってしまった。こんなに"丁寧"な旅をしたことはないし、今後もないと思う。むしろ何か学んだ、とか建設的な感想は旅には必要ない。そんな堅苦しい旅はこれで修めてしまおう...

 

 

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